■熱血!マホウショウジョ■ ---------------------------------------------------  大地が揺れた。  人々の影が消えたシブヤ駅前交差点で、二つの影が激突した。  ひとりは、身の丈3メートルはあろうかという大柄な黒騎士。 そしてもう一人は、ドレスのような鎧に身を包み、真紅の大剣を担いだ――――小柄な“魔法少女”である。  圧倒的な体格差。にも関わらず、戦いは互角だった。  いや、互角ではない。黒騎士の方が押されはじめている。剣と盾を弾き飛ばされ、無様にもビルの壁面に叩きつけられ、黒騎士は呻いた。 「ば、か、な……!  こんなことが……こんなことがッ……!」  兜が割れ、中から浅黒い肌をした男の顔が覗いている。  『銀河帝国』四天王の中でも最大の防御力を誇る、《鉄壁将軍ゲルドルフ》。その目は驚愕に見開かれていた。  こんなバカな。何かの間違いだ。この俺が、こんな、こんな。 「――小娘、ごときにィィィッ!」  やぶれかぶれで突進する。  赤い魔法少女――赤月アマネは一歩も怯むことなく、通信機に叫んだ。  「マーリン先生ッ!」  『構わん!』  間髪入れず、管制室から返事が来る。  『民間人の避難は完了している――ブチかませ!』  「はい!」  アマネが深く腰を落とす。  すー、はーと息を吸い、吐く。一呼吸ごとにパワーが満ちていく。  眼前にゲルドルフの巨体が迫る。  「――《ウルスラグナ》、フルドライブ!」  声に応じるように、真紅の大剣が眩い光を放った。 ----  ――――2040年。突如宇宙から現れた侵略者、『銀河帝国』の襲来によって地球は最大の危機を迎えていた。  圧倒的な文明レベルの差。  ジェット戦闘機、戦闘ヘリ、核ミサイル。地球最新鋭のハイテク兵器はことごとくが無力化された。  彼らは瞬く間に世界中の主要都市を占拠し、銀河帝国への隷属を命じた。  太陽系第三惑星。緑と水の美しい星。  地球はいま、悪の帝国の魔の手に落ちようとしていた。  そんな折だった。帝国の科学者たちが、地球側に亡命を図ったのは。  彼らはみな、地球と同じく一方的な侵略によって故郷の星を植民地とされた者たちだった。  ワープポータル  《転送門》から出てきた帝国の科学者達は地球人類とほぼ変わらぬ見た目だったが、  それ以上に驚きを与えたのは彼らの言葉であった。  『地球のみんな、一緒に戦ってくれ』  『帝国を俺達の手で倒そう』  『俺達は逃げてきたんじゃない』  『――あいつらに勝つためにやってきたんだ!』  ――全員が心を打たれた。  拒む者など、誰もいなかった!  その日を境に、いくつものオーバーテクノロジーが地球にもたらされた。  文明レベルの差は埋められ、地球人類は反撃の刃を手に入れた。  地球の裏側まで瞬時に移動できる《転送門》。  マイクロブラックホールを通じ、虚数空間から無限のダークエネルギーを取り出す《イマジナリ・エンジン》。  荷電粒子砲。ビーム兵器。巨大ロボット。  その他にも様々な兵器が投入され、地球側は徐々に領地を取り戻しつつあった。  そして満を持して投入されたのが、日本のアニメーションを参考に天才科学者マーリンが開発した魔法少女アーマー、《ARDOR<》だった。  闘志、やる気。気合や根性。本来は数値化できぬ人間の感情をパワーリソースとし、  然るべき人間が装着すれば上限無しの超パワーを発揮できる――ものすごく簡単に言えば『感情が昂ぶれば高ぶるほど強くなる』――地上最強の個人兵装!  それこそが―――――― ----  「《ウルスラグナ》――フルドライブ!」  真紅の大剣にエネルギーが満ちる。  日本在住の15歳、赤月アマネ。  彼女こそ世界でもっとも前向きで、世界でもっとも熱い闘志を持ち、気合と努力と根性ですべてを解決する、世界で最初の魔法少女。  ARDORシステム試作一号機――――《ウルスラグナ》の適合者!  ――思い出す。  帝国に破壊された、故郷ヨコハマ。  瓦礫の山を前に絶望する大人たち。  行き場をなくした子供たちの泣き声。  誰かが戦わなければ。  誰かが、この戦争を終わらせなくては!  闘志、闘志、闘志、闘志。アマネの闘志にあてられて、今や《ウルスラグナ》は太陽のような輝きを放っている!  「人間をッ!   マーリン先生がくれた《ウルスラグナ》を!」  真紅の大剣を振りかぶり――振り下ろす。  「――ナ、メ、る、なあああああああああッ!」  ――――衝撃。そして、爆発。  開放された《ウルスラグナ》のエネルギーは光の奔流となり、ゲルドルフを跡形もなく蒸発させた。  アマネ自身もまた、その光の中に消え――――