某県某市。駅前繁華街から少し離れた場所に、とあるシティホテルがある。  けして新しいホテルではない。廊下は少々薄暗いし、監視カメラも各階のエレベーターホール前に一台ぶら下がっているだけという安普請だ。  そんなホテルの廊下に"彼女"が現れたのは、時計が深夜1時をまわった頃だった。  925号室の扉が開き、薄手のコートを羽織った少女がそろそろと廊下に足を踏み出す。 「ね、ねえ。本当にやるの?」 『やる。話を持ちかけてきたのは支部長でしょ』 「そうなんだけど……」  少女の名は、藤原奈央。  奈央が  コートを925号室のドアノブにかける。 ----  藤原奈央はこの町のUGN支部長だ。  ユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワーク。"オーヴァード"と呼ばれる超能力者たちを束ねる組織。各地に点在する支部を取りまとめる支部長は、いわば組織のサブリーダー的な存在である。  支部長の責任は重い。  そしてプライドが高く弱みを他人に見せたがらない奈央は、とにかくストレスを内側に抱え込む性質だった。  ストレスの発散法というのは人によって異なる。暴飲暴食であったり、散財であったりといった具合にだ。  そして藤原奈央は、性欲という形でストレスを発散するタイプだった。もともと性に対する感心は強く、自慰行為も頻繁に行う娘ではあったが、支部長に就任してからはそれが顕著になった。  そんなオンボロ二流ホテルだが、宿泊客はそれなりに多い。やはり料金が安いのが大きいのだろう。  だからこそ、と言うべきだろうか。このホテルでは 「    宿泊費が安いというのもある。駐車場が無料というのもある。  そんなオンボロ二流ホテルだが、不思議と宿泊客はそれなりに多かった。  宿泊費が安いのもあるだろうが……なんといってもこのホテルは"壁が厚い"ことで有名なのだ。