十海怪奇譚 第零話(GM:ぽぽ)
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■トレーラー
GM:それではキャンペーン『十海怪奇譚』を始めたいと思います。
GM:その地には神が棲むという。
GM:むかし、腹を空かせた旅人に若者が飯を振る舞った。
GM:旅人は大層喜び、若者に宝を授けたという。
GM:浜辺に光り輝く羽衣を来た天女が降り立ったという。
GM:人を喰らう獣が眠るという。
GM:それらは全て、この地に伝わる説話である。
GM: 星見塔胡『十海怪奇譚』より
■第零話sideB 13年前『夏の話』
GM:その年の夏、子供達の中で噂は静かに広がっていた。
GM:殺された動物の噂。
GM:鎮守の森に出没する怪物の噂。
GM:願いを叶えるマユラ様の噂。
GM:どれも取るに足りない子供騙しの噂話。
GM:
GM:でも、それは。
GM:夏祭りの夜を楽しむために必要だったのだ。
GM:普段は静かな参道には屋台が並び。
GM:提灯や灯篭の灯りは夜を照らしていた。
GM:スピーカーから流れる祭囃子やお知らせのアナウンス。
GM:祭りを楽しむ人々の騒めきが君達の心を否応なく昂らせている。
GM:大鳥居の前で君達は待ち合わせをしている。
壱条ゆゆ:「あっ! もー、おっそーい!」
壱条ゆゆ:誰よりも早く来て、そわそわと待っていた。手を振っている。
露野 勲:「っていうか、壱条が早いよ……」 人込みのせいでふらふらになりながら、待ち合わせ場所にたどりつく。
風見将吾:「そうだ。俺たちは時間通りに来ている。壱条が早すぎるんだ」
露野 勲:「これでも急いだんだけどね……。自転車止める場所がぜんぜん無くて……」
風見裕二:「兄ちゃん、待ってよぉ」
壱条ゆゆ:「なってなーい! おいてっちゃうところだったんだから!」
風見将吾:「裕二も情けない声を出すな。男だろう」
風見裕二:「えー、だって」
風見将吾:「壱条は逆にもう少し女らしさを身につけろ。もうすぐ中学なのにいつまでガキ大将のつもりなんだ?」
壱条ゆゆ:腰に手をおいて、肩を上げるジェスチャー。きっちり着付けられた和服は、もう裾が乱れ始めている。
風見将吾:「着付けもなっていないぞ。振る舞いがガサツだから服装も乱れるんだ」
露野 勲:「し、将吾、やめなよ! 壱条が怖いよ」
壱条ゆゆ:「お母さんみたなお小言いうのはこの口か~!」
壱条ゆゆ:うりうりと頬を掴んでひっぱる。
壱条ゆゆ:壱条の方が少しだけ背が高いのだ。成長期が早い!
風見将吾:「やめろ! 女が異性に軽々しく触れるな……! そういうところだぞ!」
???:「お?なんだ喧嘩か~?」
GM:そんな君達の方へ一人の少女が近づいてくる。
GM:小学生である君達よりは年上、高校生くらいだろう。
GM:九段美優紀は君達の面倒をよく見てくれるお姉さん的な存在だ。
壱条ゆゆ:「あーっ! みゆきちゃん!」 ぱっと将吾から手を離し、現れたお姉さんに抱きつく。
九段 美優紀:「やあやあ、ゆゆちゃん。浴衣がお似合いだねえ」
露野 勲:「あっ! ……い、いや、これはそういうのじゃなくて……!」
露野 勲:「こ、こんばんわ……」
風見将吾:「九段先輩。こんばんは」 背筋を伸ばして挨拶する。
壱条ゆゆ:「でしょでしょ! へへー」
九段 美優紀:「将吾~、また小難しい事言ってんのか~?」
風見将吾:「小難しくなんてありませんよ。礼節を重んじているだけです」
九段 美優紀:「ま、礼儀正しいのは良い事だよ、流石は道場の跡取り」
風見将吾:「それに、男に生まれた以上は堂々としなくては」 おどおどしている勲くんを呆れた目で見ている。
露野 勲:「そうだね。……将吾のところは厳しいから……」
九段 美優紀:「勲
九段 美優紀:「ちょっと気が弱いかもしれないけど、そこが勲の良いところじゃん」
GM:どさり、と手に持ったビニール袋を縁石の上に置く。
露野 勲:「え、あ、あっ、ありがとう……ございます……」
九段 美優紀:「はい、かき氷。好きなの選びなよ」
露野 勲:「あっ。かき氷……!」 他のみんなを見る。
風見裕二:「僕、メロンがいい」
風見将吾:「いくらですか? 裕二の分も払います」
壱条ゆゆ:「やたっ! あたしあおいやつだからね!」
壱条ゆゆ:「みゆきちゃん大好き~」
風見将吾:「遠慮という言葉を知らないのかこいつは……」
露野 勲:「裕二くんは、どれにするの?」
露野 勲:「あ、メロンか……」
九段 美優紀:「あんたも大人しくご馳走になっときなって」
九段 美優紀:「ここは年上の奢りなのだよ、わはは」
風見将吾:「……わかりました。勲、裕二のことは気にせず先に取ってくれ。年功序列だ」
風見将吾:「僕らは余ったやつにする」
風見裕二:「メロン…」
壱条ゆゆ:「将吾んちは堅すぎだもーん」
露野 勲:「……大丈夫だよ。ぼくはぶどうが好きだから、こっちにするよ」 紫色のかき氷を手に取る。
風見将吾:「勲は気を使いすぎだ。もう少しわがままになってもいいと思うんだけどな……裕二、メロンが余ったぞ。よかったな」
風見将吾:一番食べたかったブルーハワイがゆゆちゃんにかっさらわれたため、コーラ味を取ってます。
風見裕二:「ありがと、勲くん」
壱条ゆゆ:やたら大きな塊を掬い、一口でぱくーっといく。
露野 勲:「九段さんのおかげだね。全力で走って来たから、もう喉かわいたよ……」
九段 美優紀:「じゃ、私は抹茶ね」
壱条ゆゆ:「あはは、痛ったーい!」
壱条ゆゆ:こめかみを抑えてきんきんする感触を楽しんでいる。
九段 美優紀:「ささ、遠慮せずにたべな」
風見将吾:「九段先輩、まだお祭りを見て回るんですか?」
風見将吾:「俺たちも今来たところです。迷惑でなければ一緒にいかがでしょう」
九段 美優紀:「そうだねえ」
???:「何が遠慮せずにだ、バカ」
GM:ぬっと、背の高い男が顔を出す。
九段 美優紀:「げっ、ヒロ兄」
ヒロ兄:「それはウチの屋台のヤツだろ」
九段 美優紀:「いいじゃん、ヒロ兄のお父さんが持ってけってくれたんだもん」
GM:ヒロ兄と呼ばれた青年は大学生で。
GM:君達とは顔馴染みだ。
風見将吾:「すみませんヒロさん、もう口をつけてしまったんで……お詫びに屋台手伝いますよ」
GM:東京の大学に通っていて、夏休みで帰省中のようだ。
露野 勲:「ど、どうも……。て、手伝えることがあれば……」
壱条ゆゆ:「こんにちわー!」
壱条ゆゆ:「おいしいです!」
ヒロ兄:「ああ、構わねえよ」
ヒロ兄:「どうせ屋台は親父たちが好きにやってるからさ」
ヒロ兄:「それより、もうそろそろ人形供養が始まるぜ」
ヒロ兄:「祭りのメインイベントだ。行かないのか?」
露野 勲:「あ。もう、その時間なんだ」
風見将吾:「あれ、もう? 今年はちょっと早いんですね」
ヒロ兄:「今年は沢山集まったらしいからな。燃やすのに時間がかかるんだ」
ヒロ兄:「デカい、篝火になるからな。見物だぜ」
壱条ゆゆ:「ねーみゆきちゃんみゆきちゃん。いっつも思ってるんだけど、人形くよーってなんなの?」
九段 美優紀:「ほほう、良い質問だね」
九段 美優紀:「全国的に似たような風習は沢山あるんだけどね」
風見将吾:「"どんど焼き"とか"鬼火焼き"ですね。地方によって名前は色々みたいですけど」
九段 美優紀:「将吾~」
風見将吾:「あっ」
風見将吾:「はい! すみません!」
九段 美優紀:「ま、その通りでさ」
九段 美優紀:「古くなった人形には魂が宿るって言ってね」
九段 美優紀:「遊ばずに放っておいたり捨てたりすると可哀想でしょ」
九段 美優紀:「だから感謝を込めて供養、つまりお葬式をして」
九段 美優紀:「あの世へ送ってあげるのさ」
壱条ゆゆ:「じゃあ、お葬式なんだ」
露野 勲:「ぼくも、供養をお願いしたことあります。小学生の頃、ヒッターマンの人形……」
九段 美優紀:「ひっひっひ、でもね」
九段 美優紀:「それは建前でね」
九段 美優紀:「昔々、この街の人形供養は生贄の儀式だったらしいよぉ~」
GM:幽霊のようなポーズをとっておどける。
風見将吾:「先輩……それはただの、酔った老人たちがよく話すオモシロ都市伝説では……」
壱条ゆゆ:「ええーっ」
風見将吾:「図書館で調べましたけど、なかったですよ。生贄の記録なんて」
壱条ゆゆ:こちらも大げさに身を反らせる。
露野 勲:「こ、こ、怖がらせないでくださいよ……」
壱条ゆゆ:「今年のイケニエは勲だーっ」
壱条ゆゆ:ばーっと両手を大きく掲げる。
九段 美優紀:「実際、室町時代の十海何某は生贄を捧げてだね」
九段 美優紀:「豊作を呼び込んだらしいのさ」
露野 勲:「ひ、ひえぇ!!!」 将吾の後ろに隠れる
露野 勲:「壱条がやるとなんかシャレにならないハクリョクがあるよ!」
風見将吾:「勲! それでも男か、しゃんとしろ!」
ヒロ兄:「相変わらず、しょうもない事に詳しいな。地理歴史の成績は最高の女だけある」
露野 勲:「む、無理だって……! 相手は壱条もしくはオバケだよ」
九段 美優紀:「ヒロ兄は家庭科10の男でしょ」
壱条ゆゆ:「あはははは」
九段 美優紀:「知ってる?ヒロ兄の小学校の夢はケーキ屋さんなんだよ」
露野 勲:「えっ? そ、そうなんですか?」 驚愕!
風見将吾:「もしかして東京に行ったのもそのためですか」
ヒロ兄:「ぐ、親父には黙っててくれ」
GM:そうこうしていると祭囃子の音がより大きくなってくる。
風見将吾:「……そろそろ行ったほうがよくないか? 人形供養、はじまりそうだ」
露野 勲:「あ。そ、そうだね」
壱条ゆゆ:「…………」
壱条ゆゆ:顎に手を当てて考え込む。
風見将吾:「壱条、行くぞ。かき氷ももう食べただろ」
九段 美優紀:「そうだね、早くいかないと良い場所取れないし」
風見裕二:「ゆゆちゃん、どうしたの?」
壱条ゆゆ:「……人形くよー、いっぱい人集まるよね?」
露野 勲:「うん。たぶん……」
壱条ゆゆ:「お祭りの人、みーんな、そこに行くってことはさ……」
壱条ゆゆ:「普段いけないとこの大人もいないってことだよね?」
露野 勲:「うん。たぶ……ん??」
壱条ゆゆ:「知ってる? ここの裏の森、こわーい怪物が出るんだって」
風見将吾:「おい。何を考えてる」
壱条ゆゆ:「小学校さいごのお祭りなんだよ。人形供養はさ、毎年やってるじゃん」
露野 勲:「……? どういうこと? つまり……」
壱条ゆゆ:「すなわち。壱条ゆゆちゃんは、夏の夜恒例、肝試しを提案します!」
露野 勲:「森の方を探検しにいく……ってこと?」
風見将吾:「……夏休み前、学校で先生がおっしゃってたことを忘れたのか? 肝試しとかそういうことを子供だけでやるのはいけないと……」
露野 勲:「ええ~~……!?」
壱条ゆゆ:「神社の裏手から森に入って、ぐるーっと回って戻ってくるの」
露野 勲:「……こわい怪物が出るのに!?」
風見将吾:「九段先輩、このバカを止めてくれませんか」
風見将吾:「人形供養の方が絶対に大事だ。そうでしょう」
壱条ゆゆ:「もー、勲は怖がりなんだから! 出るわけないでしょ?」
壱条ゆゆ:「出るかもしれないけど」
九段 美優紀:「んー、小学校最後のお祭りってのは確かに一度しかないからね」
壱条ゆゆ:「将吾もさー、山の上からなら、人形供養の火、人ごみなしで眺められるじゃん? 一網打尽!」
露野 勲:「………」
壱条ゆゆ:一石二鳥、と言いたかったらしい。
ヒロ兄:「おい」
九段 美優紀:「まあまあ、小学生だけなら危険かもだけど」
九段 美優紀:「私もついてくなら大丈夫じゃない?」
壱条ゆゆ:「みゆきちゃーん!」
風見将吾:「先輩……はあ……」
風見将吾:「仕方がない、俺も行こう。さすがに女性だけを森に入れるわけにはいかない」
壱条ゆゆ:「将吾だってパンチがあるでしょ?」
壱条ゆゆ:「怪物がでたらどかんと一発かませるじゃん」
露野 勲:「……みんなが行くなら」
風見将吾:「そもそも怪物なんていない。おばけもいない。いつまで子供みたいなことを言っているんだ、もう」
露野 勲:「ぼくも、ついていくよ」 一人で人形供養を見に行っても、つまらない。このときはそう思った気がする。
風見裕二:「ヤダ!僕はいかない!」
風見裕二:「なんでわざわざ怖いとこにいくの」
風見裕二:「お祭りがいい」
風見将吾:「そうだな。男のくせに怖がりなのはよくないが、今回ばかりはお前が正しい」
風見将吾:「裕二は大人たちと人形供養を見ていろ。終わったらまた、ここで合流だ。いいな」
壱条ゆゆ:「裕二くんがあたしたちくらいの歳になったら、また誘ってあげるね!」
ヒロ兄:「はぁ…」
ヒロ兄:「俺もついていってやりたい所だが」
ヒロ兄:「店が忙しくなる時間だ。今後の事を考えて親父には」
ヒロ兄:「良い顔しなきゃいけねえ」
露野 勲:「だ、だ、大丈夫です。将吾も、壱条もいるし……」
露野 勲:「九段さんは、みんなで守ります!」
ヒロ兄:「裕二、兄ちゃんと来るか?りんご飴をご馳走するぜ」
風見裕二:「…うん」
壱条ゆゆ:「ヒロさん、このこと内緒だからね、内緒!」
壱条ゆゆ:しーっと指を口に当てて。
九段 美優紀:「ヒロ兄、話が解るんだから」
風見将吾:「ヒロさんすみません。ちょっとだけそいつをお願いします」
ヒロ兄:「解ってるよ、第一バレたら一番俺が怒られるだろ」
ヒロ兄:「何かあったらすぐ連絡しろ」
ヒロ兄:「化けモンは眉唾だが、最近不審者がでてるってのは事実だからな」
GM:学校などで飼育されている動物が殺される事件が最近あった事を君達は思い出す。
露野 勲:「そ、……そうします……」
九段 美優紀:「あ、そうだ」
壱条ゆゆ:「そうなの?」
九段 美優紀:ポケットから何かを取り出しヒロ兄に投げる。
ヒロ兄:「うお?何だ」
GM:白くて丸い糸が巻かれたような球体に飾りひもが付いている。
九段 美優紀:「それ、さっき道で屋台のお婆ちゃんがくれたの」
九段 美優紀:「お守りだってさ」
九段 美優紀:「皆の分もあるよ」
GM:といって皆に配る。
九段 美優紀:「これでオバケもでないでしょ、厄除け厄除け」
露野 勲:「……見たことないお守りだなあ」
壱条ゆゆ:「かわいいー! 毬かな?」
風見将吾:「ありがとうございます。……手作り?」
風見将吾:「屋台でくれるお守りっていうのもそうそう聞かないような。まあ、いいか」
ヒロ兄:「良く知らねえ人から物を貰うなよ」
ヒロ兄:「まあ、いい。遅くなるなよ」
ヒロ兄:「行くぞ、裕二」
風見裕二:「うん」
風見裕二:「兄ちゃん、早く戻って来てね」
風見将吾:「俺たちも行くなら行こう。上から見る人形供養は確かに興味がある」
風見将吾:「すぐに戻る。ヒロさんに迷惑をかけるなよ、裕二」
壱条ゆゆ:「写真とってくるからね~」
露野 勲:「うん。……じゃ、じゃあ……行こうか」
壱条ゆゆ:「あ、カメラなかった。まあいいや、しゅっぱーつ!」
九段 美優紀:「はいはい」
GM:大鳥居の少し手前に森に繋がる横道がある。
GM:祭りの為だろうか、道沿いの灯篭に蝋燭が立てられ。
GM:仄かに道を照らす。
露野 勲:「……暗いね」
壱条ゆゆ:「暗いねー」
九段 美優紀:「まあ、蝋燭だけだじゃねえ」
九段 美優紀:スマホのライトをつける。
GM:少しだけ道が照らされる。
壱条ゆゆ:「あっ、最新のやつ!」
九段 美優紀:「いいでしょ、バイトして買ったんだ」
壱条ゆゆ:「すごいすごーい」
風見将吾:「スマートフォン、高かったでしょう。そうとうバイトしたんですね」
風見将吾:「俺は家の電話があればそれで十分だと思いますけど……」
九段 美優紀:「半分は親に出してもらったけどなー」
露野 勲:「アルバイト……ぼくもはやくできるようになりたいな」
壱条ゆゆ:「いいなー、あたしもそういうの――うひゃわっ!」
壱条ゆゆ:びくっ、と両脚を跳ねさせる。
露野 勲:「な、なに!?」
露野 勲:「なんか出たっ!?」
壱条ゆゆ:「なっ、なんか足に冷たいのっ……」
壱条ゆゆ:足元で、露に濡れた芒が揺れている。「…………」
風見将吾:「……怖いなら帰るか?」
露野 勲:「……ススキじゃん……」
九段 美優紀:「この辺は草むしりもしてないよね」
九段 美優紀:「確か、先には小さいお堂があった筈なんだけど」
壱条ゆゆ:「だだだだだれが怖いなんて言ったかなぁーっ」 蝋燭に照らされる首筋に汗が滲んでいる。
九段 美優紀:「本社とちがってお参りに行く人も少ないだろうし」
壱条ゆゆ:全体的にノリで動く割に……あと一歩のところで気が引ける!
壱条ゆゆ:そういう小心なところがある。普段から。
露野 勲:「壱条、そーゆーところあるからね……。お堂って、そんなのありましたっけ」
風見将吾:「明治だとか江戸だとか、その頃まではこっちにも参道が整備されていた……らしいぞ」
露野 勲:「そうなの? 将吾すごいね。ぼく、自由研究でこの街の地図作る班だったんですけど、わからないなあ……」
九段 美優紀:「ちょっと奥まった所にあるからね、詳しい人か一度行った事ないと知らないんじゃないかなあ」
九段 美優紀:「将吾は詳しいタイプだね」
壱条ゆゆ:「なんか余裕ありげな勲はらたつ!」
露野 勲:「り、理不尽ないかり……!」
風見将吾:「自由研究で郷土資料館にいったんで。たまたまです」
九段 美優紀:「ちなみに私は行ってみた事あるほうね」
風見将吾:「お堂って実際、管理人とかいるんですか? 取り壊しになってないってことは、未だに何か祀られてるとか?」
九段 美優紀:「一応、宮司さんが管理してるよ。普段は立ち入り禁止」
九段 美優紀:「見回りで見つかると滅茶苦茶怒られる」
九段 美優紀:「つまり夏祭りの夜が狙い目って事だね」
壱条ゆゆ:「ええええ」
九段 美優紀:「考える事は同じって事さ」
露野 勲:「あ。よかっ……いや、よくはない……ですけど……!」
風見将吾:「……サッと行ってサッと帰ろう。万が一うちのお祖父様に知られたらヤバすぎる……」
九段 美優紀:「ほら、もうすぐだよ」
GM:前方の方で僅かに明かりが灯っているのが見える。
壱条ゆゆ:「あそこが目的地だね!」 と言いながら将吾くんの後ろに隠れている!
露野 勲:「えーと……あれがお堂?」
九段 美優紀:「あれ?お堂に明かりなんてついてたかな。夏祭りだから特別かな」
露野 勲:「え、じゃ、じゃあ……やっぱり誰か残ってるかもしれないですよ……!」
風見将吾:「壱条……やっぱり怖いんじゃないか」
壱条ゆゆ:「怖くないやい! べらんめえ!」
露野 勲:「なんで急に江戸っ子に……」
九段 美優紀:「まあ、ちょっと覗いて帰ろうか。誰も居なければ上から人形供養も見れるしね」
壱条ゆゆ:「てゆーか、おんぼろじゃん。びっくりさせやがってー」 と言いながら堂に近づく。
露野 勲:「あ、あの、誰もいませんか~……?」
風見将吾:「しかし誰がいるんだろうな。宮司さんはこっちにはこないだろうし……」
GM:一番前を歩いていた君は足を滑らせる。
GM:ぬるりとした感触。
壱条ゆゆ:「わっととっ」
壱条ゆゆ:べしゃ、と尻もちをつく。 「……もーっ! ぬるっとした! またススキかー!?」
GM:手がべっとりと濡れる。
GM:その色は赤い。
九段 美優紀:「え、ゆゆちゃん。大丈夫?」
九段 美優紀:ライトで足元を照らす。
GM:薄暗くて気付かなかった。
壱条ゆゆ:「うん。ごめんねー、ここやだー」 手を振ろうとして
壱条ゆゆ:真っ赤な、手に。
露野 勲:「……壱条?」
風見将吾:「……おい!?」
壱条ゆゆ:「………・…え」
GM:お堂から流れ出る赤い液体が石畳を濡らしている。
露野 勲:「な、なに、その……それ……!」 胸の辺りを押さえる。
風見将吾:「ちょっと待て」
九段 美優紀:慌てて走って皆の前に出る。
壱条ゆゆ:「え……え」
風見将吾:「なんだこれ……お堂からだぞ!」
壱条ゆゆ:事態が理解できていない。「なに、これ」
露野 勲:「将吾! ち、近づかない方が……!」
???:「声?人か?」
GM:ギィイとお堂の扉が開き。
GM:学生服を着た少年が現れる。
GM:お堂の中を覗く気持ちがあるならば解る。
風見将吾:「……どうも。すみません、邪魔をしたようで」 ちらりとお堂に目を向ける。
GM:いくつもの動物の死骸が転がっている事に。
風見将吾:「すぐ帰りますので。お構いなく」
壱条ゆゆ:尻餅をついている。見上げて、扉の隙間からその有様が。 「……ひ、や」
???:「困ったな。今日は誰も来ないと」
GM:ゆっくりと歩いてくる。
???:「思ったのに」
壱条ゆゆ:「だれ。やだ、なに……っ」 後ずさろうとする。べちゃりと、流れる血が更に浴衣に塗りたくられる。
???:「同じような事を考える人間も居るかあ」
露野 勲:「……い、い、壱条」 震えながら、前に出ようとする。その足が動かない。
露野 勲:「こ、こっちに下がって。将吾が、将吾の後ろに」
九段 美優紀:「邪魔したのならごめん」
九段 美優紀:子供たちを後ろに下がらせるように
???:「いいよ、別に」
???:「そろそろ、次の段階にすすもうと思ってたんだ」
風見将吾:ゆゆちゃんを助け起こしながら、既に逃げる態勢に入ってます。武術家であっても、逃げられるなら逃げるに越したことはないと教えを受けている。
壱条ゆゆ:「ひうっ、将吾ぉ……!」
GM:右手には血で染まったナイフが握られている。
風見将吾:「九段先輩、帰りますよ。これは……あまり付き合わない方がいい」
露野 勲:「……九段さん!」
壱条ゆゆ:涙が滲んでいる。
壱条ゆゆ:かたかた震えながら、自分より背の低い少年に縋りつくように。
風見将吾:「九段先輩! 早く戻りましょう!」
露野 勲:「ゆ、ゆっくり、こっち……こっちに、こっち、こっちです。な、なんか、この……人……」
九段 美優紀:「私達は帰ります」
???:「帰れると思ってるの?」
GM:鋭い前蹴りが美優紀を襲う。
九段 美優紀:「がっ!?」
壱条ゆゆ:「みゆきちゃん!」
GM:鳩尾を蹴られ屈みこむ。
九段 美優紀:「知ってる?人形供養って昔は生贄の儀式だったって話」
露野 勲:「くっ、く、九段さん!」
???:ぬるりとした感触。
???:「知ってる?人形供養って昔は生贄の儀式だったって話」
壱条ゆゆ:大好きな美優紀が倒れる姿に、ぱっと怒りが沸く。怪物じゃない、ただの人間の、暴力。
露野 勲:「九段さん、を、……た、助けなきゃ……助けないと……」 現実感がない。足元がおぼつかない。もしかしたら何かの嘘なのかもしれないと、都合のいいことを考えた。
???:「あれ、本当の話なんだよ」
壱条ゆゆ:「こ、のおっ!」 足元の、血混じりの土砂を握って、投げつける。
???:「おっと」
GM:手で土砂を払いのける。
???:「ここの神様はね、捧げものをすれば応えてくれるのさ」
壱条ゆゆ:「みゆきちゃんから離れろ! ばかっ、ばかあ!」
???:「おかげで病気がちだったからだもこんなに健康だし」
GM:ゆゆの腕を掴む。
???:「最近、不思議と運が良い」
露野 勲:「しょ、将吾…………」
風見将吾:「おい……! いい加減にしろ!」 殴りかかります。ナイフにもひるむことはない。
風見将吾:「男が女性に手を出すな! 恥を知れ!」
壱条ゆゆ:「やっ……!」
GM:その拳を受け流し足払いで転ばせる。
???:「お、何か武術でもやってる感じの動きだね」
壱条ゆゆ:「将吾ぉ!」 わめきながら、腕をひっかこうとする。
???:「以前の僕ならひとたまりもなかった」
風見将吾:「ぐっ……! 勲、行け! 大人を呼んでくるんだ!」
???:「ん、何だこれ」
露野 勲:「……で、でも」 足が動かない。 「それじゃあ、……将吾は……」
GM:ゆゆちゃんの持っていたお守りを奪い取る。
壱条ゆゆ:「! あ……!」
???:「へえ、これ。似てるな」
???:「マユラ様に」
???:「そうそう、話の続きだけど」
???:「昔は人形の代わりに人間を生贄にしてたんだ」
???:「だから、逃がすわけないよね。ちょうど良い」
???:「動物だけじゃ、ダメなんだきっと」
壱条ゆゆ:「うう、ううーっ……!」
露野 勲:「そ、そっ、そんな……そんなこと」
???:「神様に捧げる供物になるんだ名誉な事だぞ」
露野 勲:「そんなこと、していいと思ってるんですか!・」
露野 勲:「こ、ここは日本ですよ! 人なんて殺したら……警察が……」
???:「していいに決まってるじゃないか」
???:「昔の人間はそうやってきたんだから」
???:「僕だってやる権利がある」
GM:ナイフを振りかぶる
???:「ははッ」
九段 美優紀:「やめろおおおおッ!」
壱条ゆゆ:「いやああーーっ!!!」
露野 勲:「ひ……」
GM:美優紀が少年に体当たりをする。
GM:その勢いで壱条さんは弾き飛ばされる。
???:「うわッ」
壱条ゆゆ:「ああっ!」
壱条ゆゆ:「みゆきちゃん!」
九段 美優紀:「あッ!」
???:「痛て…」
GM:少女の背中にナイフが突き立っている。
GM:傷口から血が流れ出るのが見える。
露野 勲:「……九段さん……?」
???:「順番が変わっただけさ」
壱条ゆゆ:「あ…………」
風見将吾:「お前……!」
GM:流れ出た血が石畳に染み込んでいく。
九段 美優紀:「大丈夫、私は…大丈夫だから」
壱条ゆゆ:「……い、いやああああああっ!」
壱条ゆゆ:「みゆきちゃん! みゆきおねえちゃんっ!」
露野 勲:「だ、大丈夫なわけ……」
露野 勲:「九段さんが、背中、血が……」
???:「煩いな」
GM:その時。
???:「ニエ…」
GM:深い澱んだ声が響き渡る。
風見将吾:「え?」
???:「ニエ…ニエ…」
GM:暗がりの中に人の形をした何かが立っている。
風見将吾:「なんだ……あれ」
GM:声を発しているのはそれだと解る。
???:「贄」
風見将吾:「人じゃ……ないぞ……」
???:「贄は捧げられた」
露野 勲:(……これは、だめだ)
露野 勲:(どうしようもない。そんな確信がある)
GM:空間に黒い裂け目が走る。
壱条ゆゆ:「は、はあっ、は、は……!」
???:「贄…願え」
壱条ゆゆ:お姉ちゃんを助けなきゃ。駆け寄って。手当を。
壱条ゆゆ:目が、逸らせない。息が、出来ない。
GM:美優紀が暗い裂け目に飲み込まれていく。
九段 美優紀:「…あんたが」
九段 美優紀:「神様だって言うなら」
九段 美優紀:「あの子達を助けなさい!」
露野 勲:(こんなのはおかしい)
???:「なッ!?」
壱条ゆゆ:「もうやだあ……」
???:「贄…解った」
露野 勲:(許せない。なんで、九段さんが……こんな目に遭っているんだろう)
???:「待て!捧げたのは僕だぞ!」
露野 勲:(なんでこんなことが起きることになっていたんだろう?)
???:「願いを言え」
???:「願いを!言え!」
GM:露野君と風見君の持つお守りが赤く染まる。
GM:君達の頭の中に声が響く。
???:「言え!」
風見将吾:「そいつを……」 ゆらりと立ち上がる。
風見将吾:「九段先輩を傷つけた、そいつだけは許せない」
風見将吾:「そいつを殺してくれ。……それが無理なら」
風見将吾:「俺にそいつを殺す力をよこせ!」
露野 勲:「九段さんを、助ける力を」
露野 勲:「ぼくに、九段さんを助けられるくらいの、力を!」
???:「迷い子の力を与える」
???:「ははは!僕の望みも力だ!よこせ!」
露野 勲:(たったいま動かなかった……ぼくの足を、動くように)
GM:少年が奪ったお守りも赤く染まる。
???:「叶える」
???:「贄!贄!」
壱条ゆゆ:「ひっ」
露野 勲:(九段さんよりも早く、前に出られる足。傷ついても大丈夫な、頑丈な体……)
露野 勲:(それがあれば……)
壱条ゆゆ:怯えきっている。耳を塞いで、蹲っている。
九段 美優紀:「ごめんね、やっぱり」
九段 美優紀:「危ない事はしちゃダメだったね」
露野 勲:(勇気はぼく自身でなんとかする)
GM:そう言い残して暗がりの裂け目に少女は消える。
壱条ゆゆ:「ぁ…………」
???:「贄の願い」
???:「叶えよう」
壱条ゆゆ:手を伸ばす。届くはずもない。
GM:君達の意識は暗転する。
GM:気付くと君達は大鳥居の前に立っていた。
風見将吾:「……あ」 周囲を見回す。
風見将吾:「九段先輩?」
風見将吾:「九段先輩! どこです!」
露野 勲:「……将吾」
露野 勲:「この大きな鳥居……」
露野 勲:「なんだろう?」
露野 勲:現実かどうかわからないまま、ぼんやりと鳥居を眺めている。
壱条ゆゆ:「…………え、……」
壱条ゆゆ:血と、泥塗れの浴衣。
露野 勲:「何があったんだろう」
風見将吾:「わからない。でも……」 壱条の浴衣を見る。 「……夢じゃなかったらしい」
風見将吾:「くそ。夢の方がよかった……なんなんだよ一体……」
露野 勲:「……。ぼくも」
露野 勲:「夢だったらよかった」
警官:「君達、いったいどうしたんだ」
警官:「怪我をしてるのかい?」
GM:血の付いた浴衣をみて巡回中の警官が話しかけてくる。
壱条ゆゆ:「あ、ぁあ、ぁああ…………」
壱条ゆゆ:ふらつき、頭を抱えて、鳥居の柱に縋りつくように膝をついた。
壱条ゆゆ:「……っ……」 どさり、と気絶する。
露野 勲:「……九段さんを」
警官:「本部応答願います、救急で…はい」
露野 勲:「九段さんを、助けてください!」
露野 勲:「ま、まだ、まだ間に合うかもしれない! そうすれば……今日あったことなんて」
露野 勲:「ぜんぶ」
警官:「九段?他にも誰か怪我をしているのかい?」
露野 勲:「ぜんぶ嘘にできるかもしれないんです……」 その場に膝をつく。
GM:「解った、任せてくれ」
警官:「解った、任せてくれ」
警官:「すいません、誰か救急を応援が来るまでこの子達をお願いします」
GM:周囲の大人たちが君達の所へ来てくれる。
風見将吾:警官の方をろくに見向きもせず、じっと森の方だけを見据えている。
警官:「それで僕はどこに行けばいい?教えてくれないか?」
露野 勲:「森の、お堂を」
露野 勲:「案内します。いますぐに……!」
警官:「君は怪我はしてないんだね」
警官:「解った、案内してくれ」
GM:人が集まりザワザワと騒がしくなっていく。
風見将吾:「……勲、壱条」
露野 勲:「……うん」
風見将吾:「大丈夫だ。警察がきっと……解決してくれる。九段先輩だってすぐに見つかる」
風見将吾:「もう少しだけ頑張ろう。もう少しさ。すぐ解決する……きっと……」
壱条ゆゆ:その言葉が、聞こえていたかどうか。「……お、ねえ、ちゃ…………」
壱条ゆゆ:目を閉じ、何度も名前だけを繰り返す。
露野 勲:「将吾」
露野 勲:「……」
露野 勲:「妙な感じがしない?」
風見将吾:「お前もか」
露野 勲:「……気のせいだと、いいんだけど」
露野 勲:「気のせいになんか、できそうにない」
露野 勲:吐き捨てるように言って、そのまま歩き出す。
風見将吾:「"迷い子の力を与える"。……これは、チャンスだ」
風見将吾:「もし警察が解決できないなら……」
風見将吾:「俺たちが解決するしかない」 勲の後を追う。
GM:お堂には、何もなかった。
GM:九段美優紀も。
GM:血の跡も。
GM:動物の死骸も。
GM:ナイフを持った少年も。
GM:異形の存在も。
GM:
GM:色々な人に質問されそれに答えた。
GM:ヒロ兄が悲しそうな顔をしていたのを君達は覚えている。
GM:事件は少女の行方不明として処理された。
GM:神隠し、そういう噂も流れた。
GM:
GM:もう、13年も前の話だ。
GM:むかし、腹を空かせた旅人に若者が飯を振る舞った。
GM:旅人は大層喜び、若者に宝を授けたという。
GM:
GM:その地には神が棲むという。
GM:
GM:K府十海市。
GM:日本海に面するその街に。
GM:再び何かが起ころうとしている。
GM:『十海怪奇譚」第零話 13年前『夏の話」
■第零話sideA (2021/02/05予定)